おそろしき物の歌


今夜は、万葉集の「怕しき物の謌」三首の世界を訪ねます。


第一の歌の舞台は、天上の草原です。死者は鶉の群れが飛び立つ音に驚かされます。


天上の草原、
亡者となった私が草刈り場に近づくと突然、鶉が飛び立つ

天にあるや ささらの小野に 茅草刈り
草刈りばかに 鶉を立つも
『万葉集』巻十六3887


第二の歌の舞台は、夕暮れの海峡です。死者を乗せた船が黄泉の国へ向かいます。


海に夕日が落ちるとき、
黄泉の支配者の朱塗りの船が亡者たちを乗せて海峡を行く

沖つ国 うしはく君の 塗り屋形
丹塗りの屋形 神の門渡る
『万葉集』巻十六3888


第三の歌の舞台は、雨の夜の葬儀場です。死者が人魂となって逢いにきます。


雨の葬儀の夜、
君はただひとり青白い人魂となって私に逢いに来る

人魂の さ青なる君が ただひとり
逢へりし雨夜の 葉非左し思ほゆ
『万葉集』巻十六3889


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