クラゲ


動物分類におけるクラゲの位置づけ

■クラゲ

クラゲ(水母、海月)は、刺胞動物(しほうどうぶつ)門に属する動物のうち、淡水または海水中に生息し浮遊生活をする種の総称です。体がゼラチン質で、普通は触手を持って捕食生活をしています。

クラゲといわれる動物は、刺胞動物門のうちヒドロ虫(ひどろちゅう)綱、鉢虫(はちむし)綱、箱虫(はこむし)綱、十文字クラゲ(じゅうもんじくらげ)綱にわたって存在します。これに対し、刺胞動物門のうち残りの花虫(かちゅう)綱は、サンゴとイソギンチャクを含みます。

クラゲ、サンゴ、イソギンチャクを包括する刺胞動物は、刺胞と呼ばれる毒液を注入する針を備えた細胞内小器官をもつ細胞があることから、この名で呼ばれます。

刺胞動物は、有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)と共に放射相称動物としてまとめられ、海綿動物などの側生動物に次ぐ、原始的な動物と考えられます。


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■クラゲの生活環(一)

刺胞動物門の特徴は、二胚葉性で、袋状の消化管を持ち、肛門がないことです。その具体的な構造として、クラゲ型とポリプ型があります。ポリプ型は固着生活に適した形、クラゲ型は浮遊生活に適した形と言えます。生活環の中で両方の構造を持つものの場合、ポリプ型の時期に無性生殖を、クラゲ型の時期に有性生殖をします。

多くのクラゲでは、卵から幼生(プラヌラ)が生まれると、幼生は基質上に定着してポリプというイソギンチャクのようなものになります。


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■クラゲの生活環(二)

やがて、ポリプは多数のくびれを生じ、一気に多分裂を起こします。それぞれがクラゲ型になるにつれ、多数の皿を重ねたような状態になります。この状態のポリプはストロビラと呼ばれます。ストロビラから出芽がおこり、エフィラ幼生となって泳ぎ出します。ポリプは無性生殖によって増殖するので、これを無性世代と呼びます。


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■クラゲの生活環(三)

分離当初のクラゲの幼生(エフィラ)は、八枚の縁弁を持ち、傘が深く切れ込んだような姿をしています。エフィラは次第に成長してクラゲの成体となります。成体は傘状で、その周囲に触手が並びます。一般に、浮遊生物(プランクトン)として生活します。成体となったクラゲは、生殖腺が発達して有性生殖を行うので、これを有性世代と呼びます。


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■オワンクラゲ(ヒドロ虫綱・軟クラゲ目)

オワンクラゲ(御椀水母)は、ヒドロ虫綱・軟クラゲ目に属するクラゲです。日本各地の沿岸で、主に春から夏にかけて見られます。水面に浮き、ほとんど動きませんが、他のクラゲや小魚などを大きな口を開けて丸呑みします。

傘は、碗を逆さにしたような形をしており、透明で、内側の放射管が外側からはっきりと見えます。傘の直径は最大20センチメートルにおよび、ヒドロ虫綱で最大です。

刺激を受けると、緑色蛍光タンパク質(GFP)の働きにより、生殖腺を青白く発光させます。同物質は、1960年代に下村脩博士により発見されました。GFP遺伝子は、1992年に単離され、現在、自然由来の手軽な蛍光標識として生化学の実験分野で広く用いられています。下村脩博士はこの研究により、2008年度のノーベル化学賞を受賞しました。


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■ハナガサクラゲ(ヒドロ虫綱・淡水クラゲ目)

ハナガサクラゲ(花笠水母)は、ヒドロ虫綱・淡水クラゲ目に属するクラゲです。本州中部から九州沿岸のやや深い海に、春から初夏にかけて見られます。

ただし、底生性のため、海上からその姿を見ることはできません。昼間は岩場でジッとしていることが多く、触手に小石を持って身体を沈ませる行動をとることもあります。刺胞毒により、小魚を捕らえて丸のみします。

傘の直径は10~15センチメートルで、傘の内側には橙色の十文字型の生殖腺、外側には触手による黒ずんだ縞模様が見られます。傘の表面からは短い棒状の触手が飾りのように生え、その触手先端付近は黄緑や桃色の蛍光色を呈します。


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■カツオノエボシ(ヒドロ虫綱・管クラゲ目)

カツオノエボシ(鰹の烏帽子)は、ヒドロ虫綱・管クラゲ目に属するクラゲです。本州の太平洋沿岸にカツオが到来する時期に、海流に乗って到来します。浮き袋の見た目が烏帽子に似ていることから、カツオノエボシと呼ばれます。非常に強い毒をもち、電気クラゲの別名があります。

大きさ約10センチメートルの透き通った藍色の浮き袋を持ちます。中には気体(主に二酸化炭素)が詰まっており、これで海面に浮かびます。浮き袋は必要に応じてしぼみ、一時的に沈降することもあります。また、浮き袋には三角形の帆があり、風を受けて移動することができます。カツオノエボシ自身には、遊泳力はほとんどありません。

浮き袋から海面下に伸びる触手は平均10メートル程度、長いもので約50メートルにも達します。触手が刺激を受けると、表面に並んでいる刺細胞から刺胞が発射されます。刺胞には毒が含まれ、獲物の小魚や甲殻類を殺して食べます。また、敵から身を守る防御の役割もあります。

カツオノエボシの一個体に見えるものは、ヒドロ虫が多数集まって形成された群体です。これは、管クラゲ目に共通の特徴です。一つ一つのヒドロ虫は個虫と呼ばれ、触手になるもの、ポリプになるもの、刺胞嚢になるものなど、それぞれに役割があります。個虫は互いに融合して体壁が一続きになり、内部に栄養や老廃物などを運搬する空洞ができます。


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■ミズクラゲ(鉢虫綱・旗口クラゲ目)

ミズクラゲ(水海月)は、鉢虫綱・旗口クラゲ目(ミズクラゲ目)に属するクラゲです。日本近海でも最も普通に観察できるクラゲです。傘に透けて見える胃腔と生殖腺が四つあることから、ヨツメクラゲとも呼ばれます。

傘の直径は15~30センチメートルで、それ以上のものも稀に見られます。傘には、縁辺部に中空の細く短い触手が一列に無数に並びます。傘の下側の中央に十字形に口が開き、その四隅が伸びて、四本の口腕となります。口腕の伸びる方向の中間方向に四つの丸い胃腔があり、馬蹄形の生殖腺に取り囲まれるので、四つの眼があるように見えます。


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■エチゼンクラゲ(鉢虫綱・根口クラゲ目)

エチゼンクラゲ(越前水母)は、鉢虫綱・根口クラゲ目に属する大型のクラゲです。東シナ海、黄海、渤海から日本海にかけて分布します。大量発生すると、漁網を破るなどの被害を与えることがあります。

日本では人が刺された報告はほとんどありませんが、最近の研究では毒性が高めであるとされます。同じ根口クラゲ目に属するビゼンクラゲなどと同様に、食用に供されます。

傘の直径が2メートル、重さ150キログラムになるものもあります。体色は灰色・褐色・薄桃色などの変異があります。体の90パーセント以上が水分です。


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■オーストラリアウンバチクラゲ(箱虫綱・箱クラゲ目)

オーストラリアウンバチクラゲ(オーストラリア海蜂水母)は、箱虫綱・箱クラゲ目(立方クラゲ目)に属する大型のクラゲです。

日本のアンドンクラゲやハブクラゲに近い種ですが、体はずっと大きく、体長40~50センチメートルほどの傘の下に最多で60本ほどの腕を持ち、腕の長さは最長4.5メートルにも達します。

地球上で一番毒性が強いクラゲとして知られます。体が透明であるため、海水に透き通って非常に見えにくく、長い触手の中の50億本もある刺胞針からの毒は激烈で、これが運悪く人の体に巻き付いてしまうと、ショック死を免れないとされます。

遊泳力が強く、成長するに従って刺胞毒が強力となり、その毒で自分より大きな魚をも捕食してしまうと言われます。24個の眼を持ち、これで獲物を探して遊泳します。夜間に活動することが多い他のクラゲと違い、昼間に活発に活動すると言われます。

アンドンクラゲ、ハブクラゲ、ウンバチクラゲなどの箱クラゲ目(立方クラゲ目)は、かつては鉢虫綱に含まれていましたが、分離独立して箱虫綱として取り扱われるようになりました。

箱クラゲ類で特徴的なのは、触手の基部に鰭(ひれ)があることです。また、生活環において、ポリプ世代は小型の単体性であり、クラゲ型を生じる場合に、ポリプ一つが全体としてクラゲに変形します。これは、刺胞動物の中では、ほかに例がありません。


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■アサガオクラゲ(十文字クラゲ綱、十文字クラゲ目)

十文字クラゲ目は、かつては鉢虫綱に含まれていましたが、分離独立して十文字クラゲ綱として取り扱われるようになりました。

十文字クラゲ類で特徴的なのは、生活環におけるポリプ型とクラゲ型の世代交代を行わずに、クラゲ世代もポリプ型に近い固着生活をすることです。すなわち、浮遊生物(プランクトン)とならず、一生を底生生物(ベントス)として生活します。

体形は一般にトランペット型をしており、触手を上方に向けた、他のクラゲと逆さの位置をとっています。傘の中央の口の反対側に短い柄があって、これによって海藻などに付着して生活しています。


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■カブトクラゲ(有櫛動物門・環体腔綱・カブトクラゲ目)

有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)は、クシクラゲ類とも呼ばれます。ウリクラゲ、カブトクラゲ、フウセンクラゲなどが知られています。

有櫛動物は、かつては刺胞動物と共に腔腸動物(こうちょうどうぶつ)門として分類されていましたが、有櫛動物と刺胞動物は体制が大きく異なることから、現在では異なる門として整理されています。

有櫛動物の特徴は、体の表面を放射状に取り巻く八列の光るスジ(櫛板列)があることです。その点ではクラゲ、サンゴ、イソギンチャクなどの刺胞動物と同様に、放射相称の体を持つといえます。

櫛板列には、微細な繊毛が融合してできた櫛板(櫛の歯に相当)が配列しています。クシクラゲ類は、この櫛板の繊毛を波打つように順々に動かすことで、活発に移動することができます。櫛板列の光は反射によるもので、櫛板の運動にしたがって、虹色の帯がネオンサインのように移動します。


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