オウムガイとアンモナイト


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■オウムガイとは

オウムガイ(鸚鵡貝)とは、オウムガイ目・オウムガイ科に属する軟体動物です。英名の「ノーチラス」は、ギリシャ語の「水夫」に由来します。

螺旋状の殻に入った頭足類で、ガスの詰まった殻内部の容積を調節するという、潜水艇と同様な仕組みで浮き沈みします。南太平洋からオーストラリア近海にかけて生息し、水深およそ100~600メートルに棲みます。

その祖先はアンモナイト、イカ、タコに先行して古生代オルドビス紀(五億~四億五千万年前頃)に誕生し、それからほとんど進化していないとされる生物です。


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■オウムガイの体の特徴

餌を捕食するために90本ほどの触手を使い、触手にある皺でものに付着します。触手のうち、上面にある二つの触手の基部が分厚くなって融合し、帽子のような形状を作り、殻の口に蓋をする役目をします。

眼は、短い柄の先に付いて、外側が平らになった独特の形をしています。眼は、ピンホールカメラ方式です。すなわち、タコやイカのカメラ眼とは異なり、レンズの構造がないため、視力は良くありません。

イカやタコと同じく漏斗(ろうと)と呼ばれる器官から噴き出す水を推進力にして、体を軽く揺すりながらゆっくりと運動します。主な餌は、死んだ魚介類や、脱皮した殻などです。俊敏に移動できないので、イカやタコのように生きた魚介類を捕まえて食べることはできません。また、イカやタコとは異なり、墨汁の袋は持っていません。


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■オウムガイの殻の特徴

オウムガイの殻は、外見は巻き貝の殻に似ていますが、内部の構造は大きく異なります。巻き貝の殻は奥まで一続きで肉が入っているのに対し、オウムガイの殻の内部には規則正しく仕切りが作られ、細かく部屋に分けられています。

出口に最も近い部屋が広く、ここに体が収まります。それより奥は空洞で、ガスと液体が入っています。ガスと液体の容積の比率を調節することによって、自分自身の全体としての比重を変化させて、浮力の調整をしています。

ガスと液体の容積の調整は、弁のような機構的な構造によるものではなく、液体の塩分濃度を変化させることによって起る浸透圧の変化によって、水分を隔壁の内外へ移動させて行います。


頭足類の分類

■頭足類におけるオウムガイの位置づけ

頭足類(とうそくるい)とは、軟体動物門・頭足綱に属する動物の総称です。体は外套膜につつまれた胴部と頭部に分かれ、頭部にある口の周辺には触手が並んでいます。頭部には、よく発達した眼が一対あります。神経系や筋肉も発達し、運動能力にすぐれます。

オウムガイ類は、古生代オルドビス紀(五億~四億五千万年前頃)から続いている頭足類です。現生のオウムガイ類は殻が巻いていますが、当時は殻がまっすぐなものも多く、そのようなものはチョッカクガイ(直角貝)と呼ばれます。

そこから派生したアンモナイト類は、オウムガイに似た殻を持ち、中生代を通じて世界の海中で繁栄しましたが、中生代末に恐竜とともに絶滅しました。

現生のイカのように殻を内部に持つ頭足類は、古生代半ばには出現していたと見られています。中生代のものとしてはベレムナイトが有名です。

現生のイカやタコは、鞘形(しょうけい)亜綱に分類され、オウムガイ亜綱よりもアンモナイト亜綱に近縁とされます。殻は退化して消失するか、あるいは板状になって体内に収まります。殻を失ったことで、自由な運動能力を獲得できたとされます。吸盤が並んだ八本の足があり、イカやコウモリダコでは足と別の触手(触腕)も発達します。


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■参考:アンモナイトの殻の化石

アンモナイト亜綱は、古生代オルドビス紀から生息するオウムガイ亜綱の中から分化したものと考えられています。以来、実に長い時代にわたって繁栄していましたが、中生代の幕引きとなる白亜紀末のK-T境界を最後に地球上から姿を消します。

殻の構造は、現生オウムガイ類の殻と相似性をなしており、このことからアンモナイトは頭足類であると判断されました。


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■参考:アンモナイトの生態復元想像図(ハインリッヒ・ハルダー筆)

アンモナイトは、殻の構造および軟体部の痕跡の残された化石から、殻の形の似ているオウムガイよりも、現生のイカやタコに近縁であるとする説が有力です。

イカに近く復元した場合は、ごく短い足を多数持って、水中半ばを漂うように泳いでいたという姿となります。タコに近く復元すれば、殻から長い足を出して、海底をはい回ったという姿となります。しかし、いずれも推定によるものであり、結論は出ていません。


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■参考:イカ(写真はコウイカ)

イカ(烏賊)とは、頭足綱・鞘形亜綱・十腕形上目に分類される海生軟体動物の一群です。全世界の浅い海から深海まで、あらゆる海に分布します。淡水域に生息する種類は確認されていません。

イカ類は体内に殻を持ちますが、種類によって組成や形状が大きく異なります。コウイカ目では石灰質の船形で、イカの甲またはイカの骨と呼ばれます。トグロコウイカ目では、オウムガイのように巻貝状で内部に規則正しく隔壁が存在し、ガスの詰まった部屋に細かく分けられています。ツツイカ目では、有機質の薄膜で、軟甲と呼ばれます。

十本の腕は筋肉質でしなやかに伸縮し、腕の内側にはキチン質の吸盤が並んでいます。実際の腕は八本で、残りの二本の腕は吸盤が先端に集中する触腕と呼ばれる構造です。この触腕を伸縮させて、魚類や甲殻類を捕食します。

眼や神経系や筋肉がよく発達していて、たいていの種類は夜に行動します。漏斗からの噴水、外套膜の収縮、鰭(ひれ)の使用などによって、前後に自在に泳ぎます。

敵から逃げる時は、頭と胴の間から海水を吸い込み、漏斗から一気に吹きだすことで高速移動します。さらに、体内から墨を吐き出して敵の目をくらませます。イカの墨は一旦紡錘形にまとまってから大きく広がります。これは、自分の体と似た形のものを出し、敵がそちらに気を取られているうちに逃げるためと考えられています。


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■参考:タコ(写真はマダコ)

タコ(蛸)とは、頭足綱・鞘形亜綱・八腕形上目・タコ目に分類される海生軟体動物の総称です。淡水域に生息する種類は確認されていません。

タコ類は全く殻を失っていますが、カイダコなど、二次的に殻を作るようになったものがあります。

多数の吸盤がついた八本の腕を特徴とします。見た目で頭部と思える丸く大きな部位は胴部であり、本当の頭は腕の基部に位置し、眼や口器が集まっています。その柔軟な体のほとんどは筋肉であり、ときには強い力を発揮します。

主に岩礁や砂地で活動します。マダコの場合、昼は海底の岩穴や岩の割れ目にひそみ、夜に活動して甲殻類や二枚貝を食べます。腕で獲物を絡め捕り、毒性を持つ唾液を注入して獲物を麻痺させ、腕の吸盤で硬い殻もこじ開けて食します。

危険を感じると黒い墨を吐き、姿をくらまします。この墨は、イカのそれと比べて、粘性が低く水に溶けやすいので、一気に広がり、外敵の視界をさえぎるのに有効です。また、外敵に襲われた時、腕を切り離して逃げることができ、その後、腕は再生します。


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■参考:コウモリダコの生態再現図(カール・クーン筆)

コウモリダコ(蝙蝠蛸)は、コウモリダコ目・コウモリダコ科に属する、上位分類が未定の頭足類です。熱帯から温帯地域にかけての約600~900メートルの深海(酸素極小層)に生息します。体長は約30センチメートルです。

膜状の鰭(ひれ)が張られた八本の足の裏側にはトゲが生えており、外敵に襲われると膜を裏返しにして全身をトゲで包み込み防御する習性を持ちます。鰭の付け根には、青白い光を発する発光器を四つ具えています。

学名「ヴァンピロテウティス・インフェルナリス」は「地獄から来た吸血鬼ヴァンパイアのようなイカ」といった意味で、赤い眼に加えて、膜状の鰭が吸血鬼のマントに似ていることに由来します。

和名「コウモリダコ」は、膜状の鰭を裏返しにした様子が、傘布と骨が裏返った状態の蝙蝠傘に似ていることに由来します。

この動物は、実際にはイカでもタコでもなく、それらが種として分化する以前に存在した祖形を継承している現生種であると考えられています。分類上も、本種が属すべき区分を巡っては、八腕形上目、十腕形上目、そして、独立のコウモリダコ上目と、諸説があって定まっていません。


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