ソテツとイチョウ


ソテツとイチョウの上位分類

■裸子植物としてのソテツ類とイチョウ類

陸上植物の中で、ソテツ類とイチョウ類は共に、裸子植物に分類されます。裸子植物は、種子植物のうち胚珠がむきだしになっているものを指し、シダ植物から被子植物への進化の途中段階と見なされます。

最も初期の裸子植物は、シダ植物のような葉に種子をつけたシダ種子植物で、古生代後期に出現しました。古生代末に環境が乾燥化するにつれ、ソテツ類やイチョウ類が分化し、シダ植物とその地位を交代しました。その後にマツやスギなどの針葉樹が分化し、中生代の地上はこれらの樹木に覆われました。

中生代末になると裸子植物は、被子植物にその地位を取って代わられます。現生の裸子植物の大半は針葉樹で、ソテツ類・イチョウ類・グネツム類は少数の種が残るのみです。

●ソテツ類は、古生代末から中生代にかけて繁栄した植物で、現生のものは生きている化石とされます。三科(ソテツ科、スタンゲリア科、ザミア科 )の三百種ほどが東南アジアを中心とする熱帯から亜熱帯にかけて分布しています。

●イチョウ類は、近縁の化石種が古生代に現われ、中生代ジュラ紀の頃には世界的に広がりました。イチョウ科は化石では十七属が知られ、新生代第三紀まではヨーロッパから北アメリカにまで分布していましたが、イチョウを除き、第四紀の氷河時代を迎えたころに絶滅しました。現生のものは中国に生き残った一種のみで、生きている化石とされます。


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■ソテツ(学名:Cycas revoluta)

ソテツ(蘇鉄)は、裸子植物門・ソテツ綱・ソテツ目・ソテツ科・ソテツ属の常緑低木です。ソテツ類の中で日本に自生がある唯一の種です。九州から南西諸島にかけて自生し、主に海岸近くの岩の上に生育します。南日本各地で植栽されています。

生育は遅いながら、成長すれば樹高8メートル以上にもなります。根の根粒に藍藻類を共生させており、それらが窒素固定能を持つため、痩せ地でも生育できます。

外見はヤシの木(被子植物門・単子葉植物綱)に似て、太い茎はほとんど枝分かれせず、細い枝はありません。茎の表面は一面に葉跡で埋まっています。


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■ソテツの葉

葉は茎の先端部分に輪生状に付き、全体として茎の先に杯状の葉の集団を形成します。葉はシダのように多数の線状の小葉からなる羽状複葉で、シダと同じように巻いた状態から展開するようにして出て来ます。葉先は鋭く尖り、刺さると痛みを感じます。


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■ソテツの雄花(左)と雌花(右)

雌雄異株です。すなわち、雄花を咲かせる雄株と、雌花を咲かせる雌株があり、実をつけるのは雌株だけです。いずれの花も、茎の先端を大きく占めます。

雄花は、松毬(まつかさ)を長く引き伸ばしたような形で、茎の先端に乗り、茎と同じくらいの太さがあります。松毬の鱗片にあたるものが雄蕊(おしべ、小胞子葉)で、裏一面に花粉を入れる袋状の葯(やく、小胞子嚢)が付きます。

雌花は、雌蕊(めしべ、大胞子葉)で形成され、茎の先端に丸くドーム状に膨らみます。個々の雌蕊を見ると、上半分(先端)は羽状複葉の葉が縮んだ形で、下半分(基部)には軸の左右に胚珠が並んでいます。

ソテツ類は、イチョウと並んで、種子植物でありながら独立した精子を形成します。雄花の花粉は、雌花の胚珠の先端に付着し、発芽して花粉管を形成し、その中に精子が作られます。精子は類滴形で多数の鞭毛を持ちます。


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■ソテツの種子

種子は成熟すると朱色に色づきます。種子はアゾキシメタンを含む配糖体であるサイカシンを含み有毒ですが、澱粉分も多く、十分な処理をすれば食用となります。

沖縄県や鹿児島県奄美群島では、飢饉の際に食料として飢えをしのいだとの伝承がありますが、毒にやられて苦しむ人が出て「ソテツ地獄」という言葉が生まれました。

与論島でも、戦後から本土復帰のあと数年は島民の生活は大変貧しく、ソテツの種子で飢えをしのいでいました。その様子も「ソテツ地獄」と言われます。


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■ソテツの雌蕊から伸び出る葉

雌株の茎の先端には雌蕊(めしべ)が大きな集団を作りますが、場合によっては、その真ん中から再び葉が伸びます。いわば、花の真ん中から茎が出ることになります。葉はシダと同じように巻いた状態から展開するようにして出て来ます。


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■イチョウ(学名:Ginkgo biloba)

イチョウ(銀杏)は、裸子植物門・イチョウ綱・イチョウ目・イチョウ科・イチョウ属の落葉高木です。イチョウ綱の中で唯一の現存種です。中国原産で、人為的な移植により世界中に分布しています。

長寿であり、成長すると巨木になります。樹高は20~30メートルに達し、幹周が10メートルを越えるような巨木も存在します。葉は、秋には黄色く黄葉し、落葉します。


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■イチョウの葉

イチョウは、針葉樹とされる場合もありますが、厳密には広葉樹にも針葉樹にも属しません。葉は扇形で、葉の中央部は浅く割れています。葉脈が付け根から先端まで伸びています。葉脈は平行脈で、二又分枝します。それがほぼ同じ長さで平面に広がるので、全体はきれいな扇型になります。

葉脈に主脈と側脈の区別がはっきり存在しないことは、原始的な特徴と考えられます。維管束植物の形態進化に関する「テローム説」によれば、大葉類の葉は二叉分枝した枝が平面的に広がって互いに密着したものに由来するとされますが、イチョウの葉はその原形に近いと言えます。


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■イチョウの雄花(左)と雌花(右)

雌雄異株です。すなわち、雄花を咲かせる雄株と、雌花を咲かせる雌株があり、実をつけるのは雌株だけです。いずれの花も、枝先につきます。

四~五月頃に新芽が伸びた後、雄花・雌花とも開花します。雄花は雄株の枝先に束になってつき、それぞれは雄蕊(おしべ)の並んだ穂のような形になります。雌花は雌株の枝先につき、二つの胚珠があるだけの構造です。


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■イチョウの実

実が結実するためには、雄株の花粉による受粉が必要です。裸子植物であるイチョウの受粉様式は、被子植物のそれとは大きく異なります。イチョウは、ソテツ類と並んで、種子植物でありながら独立した精子を形成します。精子は胚珠が大きく育ってから、卵細胞のあるくぼみに放出されます。

まず、五~六月頃の開花の後、雌花の胚珠に取り込まれた花粉は、胚珠の上部にある花粉室と呼ばれる部分で四カ月程度そのままの状態を保ちます。その間、胚珠は直径約2センチメートル程度に成長します。成長した胚珠内の花粉では、数個の精子が作られます。

九~十月頃に精子が放出され、花粉室の液体の中を泳ぎ、造卵器に入ります。これによって受精が完了し、種子の成熟が始まります。

十一月頃には種子が熟成し、被(果肉)は軟化してカルボン酸類特有の糞を連想させる臭いを発します。


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■イチョウの種子

イチョウの種子は、銀杏(ぎんなん)と呼ばれます。銀杏はギンコール酸などを含み、漆などのようにかぶれなどの皮膚炎を引き起こします。

また、食用とする種の中身にはビタミンB6の類縁体が含まれ、ビタミンB6に拮抗してビタミンB6欠乏症を引き起こします。少量でも中毒になることがあり、大量に摂取したために死に至った例もあります。


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