ジェッディン・デデン(トルコ軍楽)


■トルコ軍楽「メフテル」について

「メフテル」とは、オスマン帝国およびトルコ共和国で行われてきた伝統的な軍楽のことです。軍楽隊は「メフテルハーネ」と呼ばれます。

メフテルは古代から続く西アジアの音楽の伝統と、中央アジアのテュルク民族の太鼓による軍楽を受け継ぎ、オスマン帝国の常備軍(カプクル、イェニチェリ)において独自の発展を遂げた音楽の体系です。

オスマン軍は自軍の士気向上や威嚇のために、軍楽隊を連れて戦争に赴き、平時にも宮廷などの儀礼に用いました。

軍楽隊はヨーロッパへの遠征にも随行したことから、西欧の各宮廷にも知られることとなりました。モーツァルトやベートーヴェンの「トルコ行進曲」は、メフテルの音楽を意識して作曲された楽曲です。

18世紀前半には、西欧諸国も軍楽隊を持つようになりましたが、その起源はメフテルを真似たことに始まり、現在のブラスバンドの楽器の基本編成にもメフテルの影響のなごりが見られると言われます。

オスマン帝国では1826年のイェニチェリ廃止の際、メフテルハーネも廃止されました。新たに編成された西洋式陸軍では、伝統的な軍楽は近代軍隊に相応しくないとみなされて放棄され、19世紀のオスマン帝国軍では西洋式の軍楽が演奏されました。

20世紀に入ってメフテルはオスマン帝国固有の音楽として再評価されるようになり、第一次世界大戦においてオスマン軍を鼓舞するためにメフテルが演奏されました。

戦後成立したトルコ共和国でもその評価には紆余曲折がありましたが、最終的にメフテルはトルコ民族の音楽遺産と位置付けられ、再興されました。

▲上の画像は、アリフ・パシャ作「メフテルハーネ」(1837年)です。オスマン帝国の正装をした軍楽隊が描かれています。


■メフテルの楽曲「ジェッディン・デデン」について

「ジェッディン・デデン」は、イスマイル・ハック・ベイ(1865~1927年)によって作曲されたメフテルの楽曲です。

「ジェッディン・デデン」をはじめとして、現在演奏されているメフテルの楽曲は、19世紀後半以降に作曲され、第一次世界大戦中に演奏されていたものを基礎としています。

これらは西欧諸国の軍楽を逆輸入して西洋音楽の影響を色濃く受けており、イェニチェリ廃止以前のものとは異なると言われます。

歌詞もオスマン帝国末期の戦勝やトルコ民族の独立を賛美する内容が多く、近代的なものがほとんどです。

▲上の画像は、1917年にイスタンブールで撮影された、イェニチェリ式の軍楽隊によるブルガリア軍総司令官ニコラ・ジェコフ将軍の歓迎式典の写真です。


■「ジェッディン・デデン」の歌詞

【1】

Ceddin, deden, neslin, baban;
おまえの祖先も、祖父も、同世代も、父も

Ceddin, deden, neslin, baban;
おまえの祖先も、祖父も、同世代も、父も

Hep kahraman Türk milleti.
トルコ民族はいつも勇猛であり続けてきた

Orduların, pek çok zaman,
おまえの軍隊は幾度となく、

vermiştiler dünyaya şan.
世界中に名前を轟かせてきた

Orduların, pek çok zaman,
おまえの軍隊は幾度となく、

vermiştiler dünyaya şan.
世界中に名前を轟かせてきた

【2】

Türk milleti!, Türk milleti!;
トルコ民族よ、トルコ民族よ

Türk milleti!, Türk milleti!;
トルコ民族よ、トルコ民族よ

Aşk ile sev milliyeti,
おまえの民族性を熱く愛せよ

Kahret vatan düşmanını,
おまえの母国の敵を打ち倒し

çeksin o mel'un zilleti.
忌まわしい者たちに屈辱を与えよ

Kahret vatan düşmanını,
おまえの母国の敵を打ち倒し

çeksin o mel'un zilleti.
忌まわしい者たちに屈辱を与えよ

◇LINK (new):https://www.youtube.com/watch?v=ErgSS6DzaCk

▲上の画像は、レヴニ作「メフテルハーネ」(1720年)です。イスタンブールのトプカプ宮殿博物館所蔵のオスマン帝国時代の細密画です。


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